すっかりご無沙汰しておりました。夏があまりに暑く残暑も長かったので実感がありませんが今年も残り一月半となりました。
ここで今年後半の個展のお知らせです。
伊藤嘉英・早苗作陶展 ー細密磁器と彫塑の世界ー
会期: 2023年11月8日(水)〜11月14日(火) ※最終日は17時まで
会場 :日本橋三越本店 6階美術工芸サロン
3年ぶり2回目の個展になりますが、今回は6階美術フロア中央の円形の台での個展になります。
今回 三越本店の美術のホームページにてデジタルカタログも制作していただきました。折角なのでこちらではその中に掲載されている作品の解説をして行きたいと思います。
No1.「瓢箪には驢馬蓋物」(※写真は蓋を横向きに外した状態で撮影してます。)
「瓢箪から駒」ということわざがありますが、元々は張果老という仙人が瓢箪から白い驢馬を呼び出してその上に乗り千里を駆け巡っていた と云う話が由来になっています。
室町時代にこの仙人を画題にしたものが描かれていたそうですが、日本は馬が多かったので駒=馬が一般的になったのかもしれません。
本作は正に瓢箪から馬が勢いよく飛び出していますが、蓋裏面には白い驢馬がゆったりと休んでいる絵が描いてあります。
No2.「意馬心猿蓋物」
意馬心猿= 妄念や煩悩(ぼんのう)が激しく,心の乱れが抑えられないのを,奔馬や野猿が騒ぐのを抑えがたいさま にたとえた語。
本作は先のNo1との連作で煩悩に関するお話です。作品下側の内底面に柿の木のある民家が描いてありますが、この家を手に入れたいと願う猿がいます。
猿は張果老の瓢箪を盗み出しそこから俊足の馬を呼び出して競馬で一儲けを企みます。ところがその瓢箪からは馬は出て来ずに何故か左馬の駒が出てきます。
左馬の駒は「馬」の字が反転されて書かれている将棋の駒ですがこれには諸説あります。
A.馬を反対から読むと「舞う」になり、祝い事を連想させる。
B.馬はよく人が手綱を引いて連れているが、これは反転しているので馬が人を連れてくる。=商売繁盛に繋がる。
本作ではBの説を踏まえて、「競馬などの一攫千金では無く、真面目にこつこつ働いてお金を貯めて自身の努力で願いを叶えるべし」というメッセージが込められています。
そして蓋裏には頼りの馬がやる気なく草原に横たわっている図が描かれています。
作品下部内底面
作品蓋裏部